top of page
c814acc4-d31f-491c-b11b-8eff81fb6595.jpg

ブランドの案は、調査から5つの道筋で導く

執筆者の写真: ais STRATEGY
ais STRATEGY
5 日前
読了時間: 4分
ブランドの案は、調査から5つの道筋で導く

ブランドの案を「好み」で選ぶと、社内の合意も成果の検証も難しくなります。業界の調査から5つの道筋で案を導くと、選ぶ理由を一つの戦略として説明できます。


結論:案は「業界の慣習からの距離」で並べると、選ぶ理由が言葉になる

先に結論を述べます。ブランド、マーケティング、データを一つの戦略にするには、デザインの案を感覚ではなく調査に紐付けて出すことが近道です。私たちは、業界の慣習に最も近い案から最も遠い案まで、5つの道筋で案を導いています。並び順に意味があるため、経営層は「どこまで業界から離れるか」という一つの軸で判断でき、マーケティングやデータの担当者は、その判断を検証の計画に置き換えられます。

デザインを経営資源として扱う考え方は、経済産業省と特許庁が2018年に公表した「デザイン経営」宣言でも示されています。宣言は、デザインをブランド力とイノベーション力を高めるための経営資源と位置づけました。ここでは、その考え方を実務の手順に落とし込んだ方法を紹介します。

手順1:先に「業界の慣習の地図」をつくる

案をつくる前に、業界の上位8〜12社の実物(Webサイト、パッケージ、SNSなど)を集め、6つの観点で整理します。①色、②書体、③ロゴの形、④写真やイラスト、⑤言葉の調子、⑥配置です。それぞれについて「多くの企業が採っている当たり前」「企業ごとに差がついている所」「まだ誰も取っていない空いている位置」を書き出します。色は面積の割合まで記録しておくと、後の比較が正確になります。

この地図に加えて、競合として並べられる相手、買い手が何を決め手に選ぶか、ブランドの核となる約束と人格を先にそろえておきます。これらがそろわないうちは、案づくりを始めません。

手順2:5つの道筋で案を導く

地図ができたら、業界の慣習に近い順に5つの案を導きます。

道筋A 業界に沿う

6つの観点すべてで「当たり前」を採ります。ただし上位企業と同じ色の値にはしません。差は慣習を外すことではなく、線の精度や余白、色の濁りのなさといった仕上がりの質でつけます。業界の中で安心感を持ってもらうための案です。

道筋B 買い手に寄せる

買い手が日常で選んでいるブランドや読んでいるメディアを調べ、その傾向に1〜2の観点を寄せます。用途を伝えるのに欠かせない観点は業界の慣習のまま残します。「自分のためのものだ」と感じてもらうための案です。

道筋C 一部を外す

地図の「空いている位置」のうち、ブランドの核と意味がつながるものを1〜2の観点だけ選び、残りは慣習に沿わせます。なぜその位置が空いているのか、避けられている理由があるのかも調べて書きます。競合の中で一目で区別してもらうための案です。

道筋D 根拠で選ぶ

6つの観点ごとに「沿う・寄せる・外す」の選択肢を並べ、買い手の決め手に合うか、売る場所で目に留まるか、競合とのすき間を取れるか、ブランドの核と一致するか、という4つの物差しで評価します。観点ごとに最も評価の高いものを組み合わせ、全体に矛盾がないかを見直します。判断をデータに委ねたい企業のための案です。

道筋E 作り手の視点で外す

業界の慣習から最も遠い位置に置く案です。ただしブランドの核とのつながりは保ちます。他にない世界観を求める場面のための案で、どの場面で使えば力を発揮するか、AからDのどれと組み合わせれば実務で使えるかを必ず添えます。

手順3:5案すべてに「根拠」と「懸念への答え」を付ける

どの案にも、調査のどの事実に基づくか、6つの観点それぞれで慣習に沿うのか、寄せるのか、外すのかを書きます。あわせて、想定される懸念とその答えも付けます。たとえば道筋Aには「業界の中で目立たないのではないか」という懸念が出やすいため、仕上がりの質と、ブランドの約束を伝える言葉で覚えてもらう、という答えを用意します。

最後に5案を並べ、主役の色が3案以上で同じ系統になっていないか、AとEの距離が最も遠く、B・C・Dがその間に並んでいるかを確かめます。

この手順が、マーケティングとデータにつながる理由

5つの案が業界の慣習からの距離で並んでいると、選んだ案はそのまま検証の仮説になります。たとえばある企業が道筋Cを選んだ場合、「空いている位置を取ることで、競合の中で見つけてもらいやすくなる」という仮説が立ちます。広告や検索での表示回数、指名検索の件数、問い合わせ率といった指標で、その仮説を確かめる計画を立てられます。

ブランドの案を選ぶ場が、好みを話し合う場から、戦略を決める場に変わります。デザイン、マーケティング、データが同じ根拠を共有することで、一つの戦略として動き始めます。

まとめ

  • 案をつくる前に、業界上位の実物から6つの観点で「当たり前・差・空き」を整理した地図をつくる。

  • 案は業界の慣習に近い順に、沿う・寄せる・一部を外す・根拠で選ぶ・作り手の視点で外す、の5つの道筋で導く。

  • 各案に根拠と懸念への答えを付けると、選んだ案がそのままマーケティングとデータの検証の仮説になる。

出典

経済産業省・特許庁「『デザイン経営』宣言」(産業競争力とデザインを考える研究会 報告書、2018年5月)https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002.html

本文の手順は、自社の制作手順(2026年10月版)に基づく。

 
 
bottom of page