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ブランドの軸を最初に決める理由

執筆者の写真: ais STRATEGY
ais STRATEGY
5 日前
読了時間: 5分
ブランドの軸を最初に決める理由

戦略、デザイン、広告、運用を別々に進めると、それぞれは正しくても全体の向きがそろいません。最初にブランドの軸を決めることが、施策を一つの戦略として動かす前提になります。


結論:軸は「判断の基準」であり、施策の数が増えるほど効いてくる

先に結論を述べます。ブランドの軸とは、ロゴや色の前にある「誰に、何を約束し、どう振る舞うか」という判断の基準です。この基準を最初に決めておくと、戦略、デザイン、広告、運用の担当者が別々に判断しても、同じ方向にそろいます。反対に、軸がないまま機能ごとに進めると、施策の数が増えるほど方向のずれが大きくなります。私たちが軸を最初に設計するのは、この差が後から取り戻しにくいためです。

部分最適は、それぞれが正しい判断の積み重ねで起こる

部分最適は、誰かの判断が誤っているから起こるわけではありません。むしろ、それぞれの担当が自分の領域で最善を尽くした結果として起こります。

たとえばA社が、Webサイトの制作、広告運用、SNS運用を別々の会社に依頼したとします。制作会社は見た目の新しさと使いやすさを、広告の担当は目先の獲得単価を、SNSの担当は反応の多さを、それぞれの成果として追います。どれも正しい目標です。ただし、Webサイトが落ち着いた専門性を伝え、広告は割引を前面に出し、SNSは親しみやすい話題で反応を集めると、受け取る側にはA社が誰に何を約束している会社なのかが伝わりにくくなります。

このとき生まれるコストは、請求書には表れません。代表的なものは次の3つです。

  • 説明のやり直し:依頼先が変わるたびに、会社の考え方を一から伝え直す時間がかかります。

  • 判断の先送り:案を比べる共通の基準がないため、社内の合意に時間がかかり、最後は好みで決まりやすくなります。

  • 成果の検証のしにくさ:施策ごとに目標が異なるため、どの施策がブランド全体に効いたのかを測れません。

軸が決まると、4つの機能に同じ問いが渡せる

軸を最初に決めると、各機能に「この判断は軸に沿っているか」という同じ問いを渡せるようになります。

戦略:誰を主な顧客とし、競合の中でどの位置を取るかが先に決まります。取らない顧客や、やらない施策も言葉にできます。

デザイン:色、書体、写真、言葉の調子を、軸が示す人格から導けます。案を選ぶ場が、好みを話し合う場から、軸への合い方を確かめる場に変わります。

広告:訴求の言葉と見せ方の幅が決まります。短期の獲得を追う場面でも、軸から外れない範囲で表現を試すことができます。

運用:SNSやWebの日々の更新で、何を発信し、何を発信しないかの判断が早くなります。担当者が替わっても、同じ基準で続けられます。

経済産業省と特許庁が2018年に公表した「デザイン経営」宣言の報告書は、ブランド構築に資するデザインを、企業が大切にしている価値とそれを実現しようとする意思を表現する営みと整理しました。あわせて、事業戦略や製品・サービス開発の最上流からデザインが参画することを、具体的な取組の一つに挙げています。軸を最初に決めるという考え方は、この「最上流から関わる」という整理と同じ方向にあります。

軸は「決めて終わり」ではなく、検証の出発点になる

軸は一度決めたら変えないものではありません。ただし、変えるときにも理由が言葉になっている必要があります。

軸が決まっていれば、施策の結果をその軸に照らして読むことができます。たとえば「専門性で選ばれる」という軸を置いた場合、広告では専門性を伝える表現の反応を、Webでは指名での検索や問い合わせの内容を、SNSでは保存や相談につながった投稿を見る、というように、機能ごとの指標を一つの仮説の検証として並べられます。結果が仮説と合わなければ、施策を直すのか、軸そのものを見直すのかを、根拠をもって判断できます。

依頼先が複数ある場合の進め方

すべての機能を一社にまとめる必要はありません。大切なのは、各依頼先が同じ軸を受け取っていることです。次の3つを先にそろえておくと、依頼先が複数でも方向がそろいやすくなります。

  • 軸を一枚の文書にする。誰に、何を約束し、どう振る舞うかを短い言葉で書き、すべての依頼先に同じものを渡します。

  • 判断の責任者を一人に決める。機能をまたぐ判断を、軸に照らして決める役割を社内か外部に置きます。

  • 成果の指標を軸から逆算する。機能ごとの指標が、軸の検証につながっているかを確かめます。

私たちは、マーケティングの視点から経営のレバレッジを最大化することを目指しています。そのために、判断の理由まで見えるかたちで、軸の設計から実行までを一つの流れとして扱っています。軸を最初に決めることは、その流れの起点です。

まとめ

  • ブランドの軸は「誰に、何を約束し、どう振る舞うか」という判断の基準で、施策の数が増えるほど効いてくる。

  • 機能ごとに別々に進めると、それぞれが正しい判断をしていても部分最適が起こり、説明のやり直し・判断の先送り・検証のしにくさというコストが生まれる。

  • 軸を文書にし、判断の責任者を決め、成果の指標を軸から逆算すると、依頼先が複数でも施策が一つの戦略としてそろう。

出典

経済産業省・特許庁「『デザイン経営』宣言」(産業競争力とデザインを考える研究会 報告書、2018年5月)https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002.html

独立行政法人 経済産業研究所(RIETI)BBLウェビナー資料「デザインと知財:デザイン経営宣言のその後」(2021年11月19日)https://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/21111901_nishigaki.pdf

本文のA社の例は説明のための架空の例。実在の企業・数値ではない。

 
 
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